ある日、シスター鶴巻がわかちあってくださった。
私の家は農家で兄弟が多く貧しかった。けれども私はその中でのびのびと育った。特に父親の大きな心の中で。ある日私が兄弟たちと狭い家の廊下を走って遊んでいた時、廊下の鏡が倒れて割れてしまった。母に叱られ｢こんな事をする栄ちゃんは嫌い｣と言われてしまった。とても悲しかった。後で父が仕事から帰ってきた時、そのことを話して「こんなわたしは駄目だね」といったら父は私に背を向け空を見上げながら、「父さんはお前に期待をかけてるんだがな…」とぽっつりと言った。私は嬉しくなった。そして元気をとりもどした。
その後シスター鶴巻と二人で、その時のお父さんの想いが「おん父の愛に似ているね」と語り合った。どんな時でも、期待をかけて待っていてくださるお父さん「ありがとう！」。
もうひとつシスター鶴巻がわかちあってくださったこと。
感謝のうちに思い出すのは公教要理を教えてくださった神言会の外国人の神父様のこと。勉強の内容は何も覚えていないけれど、要理のクラスの始めにいつも繰り返し言っていた言葉「十二使徒の中にはユダがいたのだよ。どんな世界にもユダがいる。教会の中にも、枢機卿様たちの中にも、信者の中にも、そして自分の中にもユダがいる。それはどうしてか、神様がおゆるしになったこと。だからどんな時も誰かにつまずいてはいけないよ。」と。 お話のたびにそれを聞いて育った私はおかげ様で、人様のことを「アーだ、コーだ」と悪く言わないと心がけて過ごして来こられて幸せ。
本当にシスター鶴巻の口から私は他の人の悪口を聞いたことはなかった。