マリアの宣教者フランシスコ修道会 日本管区

イスラエル

壁の向こう側・・・刑務所での奉仕

14年間、刑務所訪問の司牧活動を続けてきたSr. エマヌエラが、刑務所の兄弟姉妹との出会いをわかちあってくださいました。

「壁」と言っても、今、私がお話ししようとしているのは、ベトレヘムの周りを取り囲んでいる壁ではなく、ハイファにあるイスラエル刑務所の「壁」のことです。その中に収容されている人々との出会いを分かち合いたいと思います。

Sr.イサベルがエルサレムのミッシェル・サバ大司教から、キリスト者の受刑者たちの霊的・道徳的なサポートのために刑務所の訪問を依頼されたのは、14年前の秋のことでした。それ以来、私たちは多くの司祭、修道者、信徒の方々と協力しながら、この使徒職を続けてきました。そこには、南北アメリカ、ヨーロッパ、また中国やインドなどアジアから来ている多くの若者が収監されており、家族も友人もなく、何の支えもない彼らを訪ね、霊的な支えを与えてきました。

私たちが訪問すると、彼らは作業を中断して面接室にやって来ますが、彼らの表情には疲れ、心配、悲しみがあふれています。でも時には、私たちに会える喜びに輝いている顔もあります。私たちは、彼らの、故郷の国、家族、夢、恐れ、過去の重荷などの話に耳を傾けます。

そして、み言葉の分かち合いをします。これは、私たちが一番大切にしていることです。受刑者たちは、お互いの分かち合いを通して、神のいつくしみに触れ、自分たちの傷の中に輝く神の姿に気づいていきます。また、姦通の現場から連れてこられた罪の女のたとえなどによって、神の限りないゆるしの中に、身を置くことができるようになります。その体験の後、個人のゆるしの秘跡、そして聖体拝領へと導いていきます。聖体をいただいたエクアドル出身のホアンは「御聖体に勇気づけられました。もう一人ぼっちではありません。私の今の望みは、周りの人々が、もう一度神に立ち戻り、この喜びを味わうことです。」とわかちあってくれました。

クリスマスや復活祭には、ミサを受刑者と一緒に祝うことが許されています。特別な部屋もなく、本当の貧しさの中で、貧しい人々の中にキリストが来てくださいます。

6年前に、34歳のジョージが「教会の人」に会いたいと申しこんできました。彼は終身刑を言い渡されている人です。私たちは毎週彼に会い、洗礼の準備をしました。そしてついに彼は復活祭のミサで、洗礼と堅信、そして初聖体を頂きました。その日は、ジョージにとってばかりでなく、私たちにとっても特別な日となりました。最も貧しい人々の中でも一番貧しい人々の中に神はおられるということを感じさせていただきました。「神をたたえよう。神のいつくしみは永遠!」

私たちのこのささやかな奉仕の目的は、受刑者の一人一人が、希望とゆるしを体験し、新たな生き方を選べるように助けることです。この14年間を振り返ると、本当にたくさんの人々の顔が浮かんできます。釈放された人もいますし、まだ刑務所にいる人もいます。それらの人々の人生に関わらせていただいたことを感謝すると同時に、いつも私たちの歩みにともにいて下さった神に賛美と感謝を捧げたいと思います。

Emmanuela Micallef, fmm