マリアの宣教者フランシスコ修道会 日本管区

36時間の旅-シリア

シスターテレサはロシアで宣教しているシリア人のシスターです。シリアのダマスカスの家族のもとに帰省している間に、中近東管区の管区長シスターナレーユから1ヶ月アレッポの修道院の手伝いをするように頼まれました。アレッポへの旅の様子を分かち合ってくださいました。

7月3日、午前8時にダマスカスから約330kmの距離にあるアレッポに向かって出発しました。普通ならバスで、4時間くらいで着くところですが、今の状況から10時間はかかるだろうと思っていました。

バスに乗ると、乗客たちが、皆、コーランやイスラムのロザリオを手にして、ずっと祈っているのです。もちろん私も同じように祈りました。きっとFMMのシスターたちや私の家族も祈ってくださっていたことでしょう。

 旅の始めの数時間は、ライフル銃を持った兵士達の中を通ってはいたのですが、静かに進むことができました。しかし、しばしば検問があり、身分証明書の提示を求められました。バスの中では、乗客たちにひっきりなしに電話がかかってきていました。私も、もちろんシスターナレーユやダマスカスのシスターたち、そして私の家族から安否を気遣う電話をいただきました。

車窓から見える町の様子に、本当に心が痛みました。どこもかしこも戦争の被害を受け、建物という建物は、皆破壊され尽くされているのです。特に、国際ハイウェイの見る影もないような姿に、心痛みました。

7時間後、家族や外部との電話のやりとりで、アレッポの入り口が閉鎖されているらしいという噂が流れ始めました。戦闘が起こっているらしいと言うのです。もっともあちらこちらで戦闘が起こり、旅を続けるためには、戦闘が終るまで待たなければならないということはよく起こっていることでした。休憩をとったとき、運転手は、ゆっくりして、よく食べておくようにと言いました。実際、アレッポの入り口が開くのを待たなくてはならいので、いつになったら出発できるのかわからなかったのです。
夕方5:30頃ころ、アレッポまで30kmという標識が見えました。それで、6時過ぎには、修道院に到着できると思い、少しほっとしました。しかし、それから10kmもしないうちに、たくさんの大型バスやバスが止まっていて、全く動くことができなくなりました。戦闘で、アレッポの入り口が閉鎖されているということです。それで、シスターや家族と連絡を取り、その旨を伝えました。
 
  夜の帳がおりましたが、全く動くことができません。バスの中で一夜を明かし、夜明けと共に動き出しました。その一夜、バスの乗客のお互いの支えあいはすばらしいものでした。携帯電話を持っている人が、持っていない人に家族に無事を知らせるために電話を貸したり、バスから降りて、食べ物を買いに出かけそれを皆に配ったりする人もいました。また、皆自分の持っているアラブケーキ、なつめやし、飲み物などをお互いに分かち合っていました。また親切にも、一夜の宿を提供してくださった村人もいました。
 
 武装勢力に囲まれていたので、とても騒々しい夜でした。朝5時頃、車が動き始めました!もうすぐ、アレッポです!しかし2km先で、またバリケードで道が封鎖されてしまいました。戻らなければなりません。また戦闘です。爆弾が炸裂する音や機銃掃射の音が近くで聞こえました。少なくとも後1週間はアレッポへの入り口が閉鎖されているというので、国際ハイウェイを通ってアレッポに入る道は絶たれてしまいました。残される二つの方法から選択しなければなりませんでした。一つは、「いわゆる安全な道」(だいたい4時間の道のり)を通って、アレッポの「アルモサラヒン」が支配する地域に入るという方法と、もう一つはダマスカスに戻るという方法です。バスの運転手は、知らない道を進んでこれ以上危険を冒したくはないということで、何人かが小さなバスに乗り換えて旅を続けた他、大部分の乗客は、ダマスカスに引き返すことになりました。

朝10時にダマスカスに向けて出発し、だいたい夜8時ころにダマスカスに着く予定でした。帰りの道も危険に満ちたものでしたが、バスの中は、行きよりも和やかな雰囲気でした。乗客たちがお互いに親しくなっていたからです。近くに座る女性が私に「指輪は何の意味なのですか?」と尋ねました。彼女は、昔の私たちの学校の卒業生で、彼女の妹は私のクラスメートだということがわかり、電話番号を教えあいました。

ダマスカスの門

ダマスカスの入り口で、私たちは、右も左も見てはいけない、またどんな動きもしてもいけないという命令を受けました。そしてバスは狙撃を恐れて猛スピードでダマスカスに入っていきました。

この旅の間、ずっと祈り続けてくださったシスターたちと家族に感謝しています。家に帰って、私の妹の小教区の教会で、私が無事でダマスカスに帰ってこられるようにと、私のために御ミサを捧げてくれたことがわかりました。本当に主に感謝しています。慈しみ深い神様に賛美と栄光がありますように。

Sr.Thérèse