経済緊急事態にあるベネズエラから多くの人々が生き残りをかけて海外に逃れてきています。ペルーは、それらの人々を受け入れている国の一つです。ペルーのシスターたちが、受け入れの様子を分かち合ってくださいました。
うすら寒い朝、通りから「コーンパンケーキ」｢ハーブティー･･･」という声が聞こえてくると、私たちは、このアクセントはどこの人かしら、と思い巡らします。2017年10月以来、このような声が、ペルーのあちらこちらに響き渡るようになりました。生きる道を求めて五十万人余りのベネズエラ人がペルーにやって来ました。バスでお菓子を売ったり、道でレモネードやコーヒーを売る姿を見かけます。お店では荷物を運び、レストランでは仕事を手伝って食べ物をもらったりしています。節約のために小さな一部屋を借りて、大勢の人が一緒に住んでいます。このような状況を目にして、私たちは何かできることはないかと考え、まず、彼らのもとに行き、話に耳を傾けることから始めました。そのために社会司牧をする他の修道会と協力して、彼らと共に歩む「移動チーム」を結成し、新たな活動が始まりました。
私たちが出会った数人を紹介しましょう。
◆ルス・マリー：
苦しそうな顔つきで、「シスター、私はカラカスの母の家に二人の小さな子どもを置いてきました。子どもたちは、食べ物も薬もなく、何もかも困っています。お金を送る手段を考えなくてはならないのですが、同時に、母と子どもたちを迎えるために、リマで部屋を準備しなければなりません。しかし、私が食べるものさえないのです。｣と訴えました。 このような話しを聞いて、ただ聞くだけの傍観者でいられるでしょうか。すぐに皆に呼びかけ、お金を集め、コーンパンケーキとレモネードを売るための道具を準備しました。
◆ニロ：
一人のペルーの若者が、憔悴した様子の二人のベネズエラ人を連れてきました。二人のうちの一人はニロと名乗りました。彼らの話しは次のようでした。｢私たちの友だちがやってくるのですが、女性なので私たちの部屋に泊めるわけにはいきません。お願いです。彼女が仕事を見つけるまで泊まる所を提供してください。｣私たちは移動チームと協力して彼女を迎える部屋を準備することができました。その女性は幸いにも仕事が見つかり、1か月600ソル稼げるようになりました。しかし、その全額をベネズエラの家族に送りたいので、自分の生活のためにパンケーキを売る事を考えているとのことです。
◆ビクトール：
ある日、教会でゆるしの秘跡を受けたいという男性に出会いました。ベネズエラから移住してきたビクトールです。彼の話しによると、果物市場で働く二人の人と一緒に小さな小屋に住んで、食事は、道端のごみ箱から食べ物を拾っているということでした。その後、もう一度彼に出会うことがあり、ゆっくり話すと、彼はベネズエラではリウマチの専門医で「ペルーで医師免許を更新する方法を探している」と言うのです。そこで、私たちの移動チームの集りに誘い、医師免許の更新に必要な手続きを手伝いました。今では時間があるときには教会で空箱をテーブルにして、ベネズエラの人々の診察をして移動チームの手伝いをしてくれています。診察のための薬は寄附にたよっています。ベネズエラでは二つの病院で働き「このような身の上になるとは夢にも思っていなかったが、今ではかえって心に平和がある」と話してくれました。
クリスマスが近づき、私たちFMMの共同体ではクリスマスにベネズエラの人々を招待することにしました。20人くらいを予定していましたが、60人のベネズエラ人がやって来ました。子どもたちの声を聞き、大人たちの微笑む姿を見てうれしいけれども、準備したもので全員に食べ物が行き渡るかどうかが心配だったのです。しかし、神は寛大にも見捨てておくことなく、パンの奇跡を起こしてくださり、ペルーの代表的な料理「カラプルクラ」を全員で楽しむことができました。子どもたちは、バランコの私たちの学校の生徒がプレゼントしてくれた、パネトーネやおもちゃをもらって大喜びでした。
私たち移動チームは、他の様々なグループと連帯してこのような活動を行っています。その中にはイスラム教のグループもあり「食料バスケット」を多くの家庭に配布してくれています。また、イエズス会の「出会いプロジェクト」も大きな力となっています。それらのグループの多くの体験を聞かせていただいて、私たちもプロジェクトを立ち上げ、今は５家族の支援を行っています。貧しい人々の叫びに耳を傾け、「出向く教会」の現実の中に身を置くこの体験によって、私たち自身が福音を生き、キリストに出会う恵みをいただきました。教皇フランシスコは次のように勧めておられます。
｢福音を宣教する共同体は行いと態度によって他者の日常生活の中に入っていき、
･･･人間の生活を受け入れ、人々のうちに苦しむキリストのからだに触れるのです。」
『福音の喜び』24
Valdivieso共同体（プレノビシア）