マリアの宣教者フランシスコ修道会 日本管区

沖縄修道院

カトリック伊江島教会伊江島にある沖縄修道院

 

那覇市の中心にあって、教区の保育園と教会に奉仕していた私たちは都市計画によって保育園と修道院が移転しなければならなくなったことを機に、本会の優先事項に従ってキリストがまだ知られていない人々、より貧しい人々のところを求めてシスター3人で伊江島に入り23年になりました。

伊江島は本島北部の小さな離島、自然がとても美しい島です。激しかった先の戦争直後米軍は島の67パーセントを基地にしましたが、非暴力で土地返還運動を続けた結果現在は35パーセントになっています。人々は明るく前向きで島の活性化に元気に取り組んでいます。しかし傷は深く今なお多くの人が苦しみに耐えています。また、現在はオスプレイの訓練が日常的に行われて新たな苦しみも加わりました。

カトリック伊江島教会・祭壇 島民は南国特有のおおらかさを持ってとても親切です。私たちは島独特の古い家に住みながらこのような苦しみの中にあり、また、離島の貧しさや不便さを生きている人々にできるだけ共感し、できるだけ同じように生きていきたいと思っています。また修道院の敷地の芝生をいつも刈ってくださる方や困った時にはすぐに助けに来てくださる方等によって周りの人々に受け入れられ助けられて生きています。祈りと働きを持って私達は小さき者・貧しいものとして普通に生活しながらご聖体のイエズスと共にこの島の真ん中に存在しています。このことは私達が一番大切にしていることです。

私たちは、初めから伊江島巡回教会に奉仕しています。信徒数は少ないのですが月に3回名護教会や那覇にある教会から4,5人のベトナム人の若く元気で素敵な神父様がお一人で、あるいは数人の信徒を伴って代わる代わる来てミサを捧げて下さいます。月に1度は私たちが島を出て名護教会のミサに参加し信徒の皆様との交流を大切にしていますが、街に出たこの機会にあちこちで買い物をすることもあり、一日がかりの外出となります。これは私たちの楽しみの一つです。

島の住民になってすぐ始めた特別養護老人ホームでのボランティアも途切れることなく続いています。入浴後の体を拭き飲み物を差し上げ、食事介助や後片付け等をしています。数年前に発足した障害者の作業所にも行くようになりました。様々な苦しみを持つ利用者と会話しながら一緒に作業をしています。又、近隣の独居老人や心の障害を持つ方とその家族を訪問し、彼らの話しに耳を傾けてきました。幾人かとの関わりを紹介します。

ハイビスカス野生の① オスプレイが上空を飛ぶ畑の中、崩れかかったトタン屋根の暑いバラックに一人で住む89 歳のYさんを訪問し、戦中戦後の貴重な体験談を聞きながら関わっています。19歳で日本軍の炊事班に入れられたこと、慰安所に駆り出された本島や中国人の女性たちのこと、壕に米軍のガス弾が投げ込まれ火を放たれて爆死した父のこと、母と共に日本兵に銃で脅かされて城山の壕から追い出され、小舟で本島北部にわたり間一髪で助かった話、厚生省に協力して壕の中の遺骨を収集したこと、結婚後夫と5人の子供と共にボリビアに移住した苦労話等、生々しい話を痛む足を抱えながら、敢えて明るく話してくれるこのおばあは、話を聞いてくれることが嬉しいと、いつも手作りの野菜を惜しみなく持たせてくれます。

リバーシブルハイビスカス②近く90歳を迎える一人暮らしのKおばあは私たちの初めからの友人です。四つん這いになっても家事だけでなく、庭の小さな畑で野菜を作り、海岸にあおさを取りに行くほど活動的な彼女は、戦争中、死に物狂いで逃げていた時、目の前で爆弾が破裂し片目を失いました。今でも体のあちこちに破片が残っていることを見せながら、そのせいで高齢になって歩けなくなったこと、治療してくれた米兵の親切やもらったお菓子の美味しかったこと、戦後一人で子供を育てる為、昼も夜も働いたこと等を、明るく話してくれます。でも時折ヤマトンチュウ(日本人)への怒りを顕わにします。私たちは日本人として心が痛みますが、ゆるしを求める心を持ってこの怒りを受け留め、和解とゆるしの小さなかけ橋でありたいとの願いを持って関わりを続けています。

果物の花4③伊江島教会の70代の信徒で本土出身のHさんは小児麻痺のため、片足だけしか動きません。その足の指で描いていた絵も今は描けなくなっています。一人の姉妹が時々訪問し、車椅子の体の位置をなおしたり、ちょっとした用事を手伝ったりしていたある時、「短歌の会を開きたい、一緒にしよう」との誘いに乗りました。会員はわずか4人ですが2年ほど続けてきたある時、Hさんが「聖書を勉強したい」と言うと、すかさずもう一人の会員Aさんが「わたしもしたい」と反応。昨年から聖書の勉強会を始めています。この姉妹が島を離れた後も他の姉妹が担当し勉強は継続しています。普通の関わりの中から、自ら望んで聖書を学び始める方が出たことは、私たち共同体の大きな喜びです。

私たちは自然とも優しいかかわりを持ちたいと思っています。その為EM(有用微生物群)を良く使用してきました。EMを使ってボカシⅠ・Ⅱを作り、毎日出る残飯を処理し土に埋め、小さな菜園には肥料として使っています。活性液や米のとぎ汁発酵液なども作り、掃除や衣類の柔軟剤として使用し畑にも撒きます。また排油にEMを入れて作った石鹸は食器洗いや洗濯に使っていますが手も荒れずとても良いです。手狭だった修道院に2年前コンクリートにEMを入れて建てた新しい部屋を増やしました。この部屋の2つが常時空いています。これまではシスターが黙想の為に訪れてくださり、知人の母子や体験学習に来られた信徒の方等にお泊り頂きました。これからも女性の皆さまに利用していただきたいと思っています。敷地内には僅かずつですがバナナ、たんかん、パパイヤ、ピタンカ、アセローラ、ドラゴンフルーツ、パッションフルーツ、グワバなど南国の果物がそれぞれのときに実をつけます。このような環境の中で自分の将来を考えたい若い方、私たちと一緒に生活し修道生活を体験したい方、静かな祈りを求めておられる方、又、伊江島で平和について体験的に学びたい方等、この部屋を利用して下さる方を心から大いに歓迎致します。(FMMのホームページ“祈りの集い・黙想会”をご覧ください) 海岸から望む伊江島の海