マリアの宣教者フランシスコ修道会 日本管区

アフリカ・アンゴラ管区

此処に掲載されているのは、アンゴラのミッションで眠り病とエイズの患者のために働いているシスターの手記です。

私がポルトガルのリスボンで熱帯地方の疾患について勉強していたとき、私の前に広がろうとしている奉仕の仕事がどんなものであるかについては、まったく分かっていませんでした。私が派遣されたアンゴラの北部6つの地区の一つであるムバンザ・コンゴは、この病気に最も多く冒されていて、しかも治療に対する抵抗が一番強いところです。1998年には8,000人の病人がいました。当時、すでに2つの別の地方で、ドイツのカリタスの資金で働いているプロジェクトがあり、ムバンザ・コンゴではそのために働く職員と組織はありましたが、医師はいませんでした。

眠り病はツェツィというアフリカ産の吸血性ハエにかまれることで伝染する、トリバノソーマと呼ばれるごく小さな寄生虫で起こる病気です。もし、治療を受けないで放置すると、大体2年くらいで死にいたる恐ろしい疾患です。最初の段階で、この病気はインフルエンザかマラリアに似ていますが、それは周期的に再発します。このトリバノソーマが脳に入ると、睡眠を統制する領域が冒され、その結果、患者は夜よりもむしろ昼間に眠ってしまいます。(このわけで、眠り病の名前がついています。)それは体全体に広がり、患者は次第にひどい脱力感に陥り、あらゆる行動に対する興味を失い、食べることを止め、ついに死に至ります。しばしば家族は最後の段階になって始めて患者を治療のために連れてきますが、ほとんどの場合、手遅れで、為すすべもありません。あらゆる年齢の人がこの病気にかかる可能性があり、妊娠している女性は胎児にも感染します。私は何度もこのような悲しい体験をいたしました。

私が所属している健康チームには12人の看護師と検査技師がいます。約3年間、私たちは「ANGOTRIP」と呼ばれるプロジェクトに取り組んできました。この国における長い戦争のために、コミュニケーションの難しさなど種々の問題に遭遇しました。それに加えて、医薬品の調達の難しさがあります。特定の医薬品は砒素で作られています。その2次反作用の中に神経系統の症状が現れ、その結果、昏睡に陥ってしまいます。さらに、薬物治療は正しい服用量であるように管理されているにもかかわらず、時には寄生虫を殺すことができず、患者が重態になってから別の薬を投与することになります。これは患者一人当たり800ドルもかかりますが、幸いなことに、行政機関は私たちが国外から医薬品を獲得するのを助けてくれます。

治療の甲斐もなく患者が亡くなったとき、私はとても事の重大さを感じ、我知らず涙を流したものでした。別の病人たちは「この場合、家族に問題があるのです」と問題を片付けてしまうのでした。彼らは魔法を使っていて、病人が亡くなるのは、家族の人がかけた悪霊のまじないの犠牲になったのだと信じています。この時期、ムバンザ・コンゴはUNITA(アンゴラ全面民族独立民族同盟)の軍隊に占拠されていましたが、戦争が終結すると、このプロジェクトも終わってしまい、私は現在、特別に造られたの別の組織で仕事を続けています。看護師と検査技師のグループは現在も同じ問題に直面し続けていますが、この病気の予防と抑制の努力のお陰で、病人の数は減少しました。神の助けによって多くの命が救われており、「命の主」は決して私たちを見捨てられず、いつも共にいてくださいます。
現在、私は結核の医療センターで世話をしています。この患者たちのところで働いていると、患者の多くがエイズにかかっていることが分かります。世界的にエイズは増えてきてることは知られていますが、ここでは恐ろしい病気と死の深い体験をいたします。多くの場合、エイズに冒されている人たちは、この病気が魔法によるものだと信じていて、因習的な治療をしようとします。病気にかかると、彼らはほとんど何もできなくなってからドクターのところにやって来ます。しばしば母親が子供を残して死ぬと、子供は祖母や叔母たちに育てられます。彼女たちは大体、シングルマザーか夫に捨てられた女性です。残された者は自分の配偶者の健康を心配しています。一体、誰から誰に感染したのでしょうか?

このような状況のもとで、私たちはエイズに立ち向かうための地方レベルでのプログラムを作る努力をしています。沢山のサジェスチョンや発案、政府の援助(まだ物質レベルではありませんが)がありますが、何よりもまず沢山の病人がいます。

「命の主」が日々、ご自分が与えてくださる「いのち」を通して、また「いのち」のうちに命を与える方法を示してくださるよう祈っています。