カトリック国際協力委員会委員 菊地功
インターネットでメイルを送るなんて、ちょっと前までガーナの山奥にいた私には夢のような話です。何しろ私の住んでいた村には、電話はおろか電気もきていなかったため、技術的な水準での比較をすれば、日本の人たちと同時代を生きているのかどうか疑いたくなるような生活でした。それにしても、クリック一つでコンピューターが「メイルの送信完了」と教えてくれたとしても、何となく「本当に届いたのかな」と不安になりませんか。そこまで機械を信用する水準に私が達していないせいかもしれませんが、私は不安です。メイルを送る目的が、何らかのメッセージを「伝達する」ことであるならば、その目的を達成したのかどうかこれほど不安にしてくれる伝達手段もないものだと思います。
お正月には大神学院の台所もお休みですから、私も「自炊」をしました。といっても、スーパーに並んだ新鮮な食材をみても、それがどんな料理に化けてくれるのか皆目見当がつかない程度の「料理の腕前」ですから、結局は「チンするだけ」の調理済み料理を仕入れることになります。電子レンジで暖めた鯖の煮付けを食べながら、心に広がる虚しさの原因を考えていました。おいしい鯖ではあるけれど、残念ながらインスタント食品では食事を作ってくれる人の「心」が感じられないのです。確かに手軽に料理が出来てしまいます。しかし「お手軽さ」は、心の介在する余地を奪ってしまいます。
技術革新が進んでメッセージの伝達も手軽に出来るようになりました。自分の部屋のコンピューターを操作すれば、遥か彼方の国にでも瞬時にメッセージを送ることが出来るようになりました。ホームページを送ることが出来るようになりました。ホームページを作って多くの人にみてもらえれば、メッセージを伝えたような気分になります。でもやはり、お手軽になった分、そこには心の介在する余地が無くなっているのではないかと不安になってしまいます。
宣教とはすなわち、キリストのメッセージを伝達することです。
そういう言い方が当たっているかどうかは分かりませんが、いわゆる第三世界の宣教地で働く宣教者の多くは、メッセージを伝えるために「体を張って」仕事をしています。つまり、メッセージそのものを言葉や文字だけではなく、自分の「生」を通じて伝達しています。生きることによって伝えています。たぶんそれは、「お手軽」とは対局にある方法論だと思います。そしてもどかしさを感じながらも、異文化の中で懸命に生きることによって伝わったメッセージには、「心」がこもっています。
何もで「インスタント」が幅を利かせる世の中です。その中でキリストのメッセージを「心を込めて」伝えることは、何とも手の掛かる面倒なことです。しかし、だからこそ「宣教者」はやりがいのある生き方なのです。
「会」の第六十回役員会が、九七年三月十二日(水)午後六時から、東京・四谷の上智大学内SJハウス会議室で開かれ、次の案件を審議、決定した。
- 「きずな」第五八号について
クリスマス、新年を通して、海外からの便りも多く、今号は二十ページ建てとした。また、はじめて、二人巻頭言を試みてみたと、編集者からの報告があった。
- 「きずな」五九号について
☆巻頭言は菊地功神父(海外宣教を考える会)に依頼。原稿発行六月一日。発送作業は六月四日(水)の予定。
☆きずな″の紙面構成について、記事に数字やアルファベットが多いので、横書きの編集も考えられるのでは……との発言もあり今後、時間をかけて、検討することになった。
- 援助審議(別項)
- その他=☆「会」が昨年、販売協力した、ニカラグア現地婦人自立のための手作りカードの販売が、現地で喜ばれているので、今後も協力してはしいとの、シスター弘田から要請があった。折から帰国中のシスター弘田のスケジュールを聞き、講演会について検討することになった。☆援助要請について、援助の基準、確認をはじめ「会」の援助について、改めて、皆で考え、より良い方向への努力が必要であることを再確認した。☆菊地神父より「海外宣教を考える会」の説明☆次回役員会は六月二十六日(木)SJハウス会議室。
(1997.3.12決定分)
地区 | 援助要請者 | 援助内容 | 援助金額 |
ボリビア | Sr漠那和子(扶助者聖母会) | 広域移住地、遠隔地日本人移住者、病人訪問のための宣教用車のガソリン代の一部 | 3,000ドル(375,000円) |
フィリピン | Sr松田翠(御受難修道女会) | 高台地での水利確保のための井戸掘削工事、及び周辺集落への水道設備のための建設費として | 1,000,000円 | |
日本 | 日本カトリック移住協議会 | 宣教地への、カレンダー手帳、カトリック誌等の発送費 | 651,193円 |
計 2,026,193円
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