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KIZUNA 日本カトリック海外宣教者を支援する会 JAPAN CATHOLIC ASSICIATION FOR AID TO OVERSEAS MISSIONARIES







『貧しい人の側に立つ教会を実感』

フマニタス慈善協会理事長・横浜教区司祭 佐々木 治夫



 私のブラジルでの宣教は48年になりますが、この間、神様からいただいたお恵みは勿論、世界中からいただいた霊的、物質的援助はどれほどになるでしょうか。この恵みやご援助に対しどれほどのことができたかを思うとき、自分の無為さえ感じる今日この頃です。
 この長い宣教活動の始めに、私が中南米で出会った最初のショックは、文化的なものではなく宗教的ショックでした。私が持っていた信仰は、どちらかといえば知識からの信仰で、中南米の聖人への信心を中心とした信仰とは相容れないものがありました。ブラジルへの船旅の途中、ベネズエラのカラカスの司教座聖堂で、この聖人への信心を中心とした信仰に出会ったとき、「これが私の信じてきたカトリックの教えなのか」という宗教ショックを受けたことを、今も忘れることができません。そして、長年の間、「この信心を信仰にまで高めてあげる」のが、私の宣教活動の基本ではないかと考えてきました。
 私は上智大学でスコラ哲学とスコラ神学を学びました。中世の理論神学を喜びのうちに学ぶことができました。この神学は、人間の理性の上に打ち立てられたすばらしい楼閣のようで、この魅力に囚われ、喜びの中での司祭叙階でした。聖書の研究はこの楼閣の影に隠れ、ほとんどなされなかったというのが事実です。
 ブラジルに着いて間もなく、第2ヴァチカン公会議が開かれ、中南米の教会が盛り上がりました。この公会議からの10年間は、公会議についての研究と、その具体的適用、特に聖書の再読、基礎共同体つくり等、私にとって夢のようなすばらしい時期でした。コロンビアのメデリンでの中南米の司教会議の準備として、私たち司祭にもアンケートが配られ、新しい教会の息吹を吸うことができました。
 その後も10年間、メキシコのプエプラの司教会議に向け、皆が「学者、知者に隠して小さな人々にあらわしてくださった」神の探求が続きました。こうして理論神学でなく、実践神学が生まれ、「貧しい人の側につく」新しい教会が生まれてきました。
 現在、日本から多くの宣教者たちが、世界の貧しい国々へ派遣されています。この宣教者の活動を『きずな』を通して知るとき、「貧しい人たちの側につく」新しい教会の誕生を見ることができるようで心躍らされます。「信仰とか信心」が貧しい人たちのなかでは問題にもならず、かれらの生命と自由の根源になっている事実こそ、大切ではないかと思うようになってきています。人間の考え出した神でなく、イエスのなかにご自分を示してくださった神を求めながら、今後もイエスに倣って人々への奉仕を続けていきたいと願っています。






『第21回運営委員会議事録』


日時:2006年6月15日(木)18:00〜19:30
場所:四谷SJハウス会議室
議事:

I.2005年度活動 
事務局の八幡さんより資料をもとに活動報告が行われた。

[広報活動]
@広報活動:宣教地からのレポートや国内会員の声などで作る会報誌『きずな』を年4回(6,9,12,3月)発行し、国内会員と海外の宣教者に送り、相互の交流と現地活動を多くの人に伝える役割を果している。
A勉強会:一時帰国宣教者を迎えて下記のとおり開催し、大変講評であった。
※6月7日 於 四谷SJハウス会議室
Sr.平間理子(マリアの宣教者フランシスコ修道会)マダガスカル
Sr.中村寛子(マリアの宣教者フランシスコ修道会)コンゴ民主共和国
※11月23日於 四谷SJハウス会議室
Sr.真神シゲ(ペリス・メルセス宣教修道女会)ペルー、ニカラグア グアテマラ
野原昭子(福岡教区湯川教会信徒)ボリビア(コチャパンパ)
Sr.牧野幸江(マリアの宣教者フランシスコ修道会)マダガスカル
B「海外宣教者名簿2006」を700部発行した。
Cホームページへのアクセスも多く、カリック関係者以外からも宣教者に関する問い合わせがあり、情報提供に協力した。

[援助活動]
 資料にある通り、海外の宣教者から申請のあった援助について、申請書類に基づいて実績や内容について検討し、緊急性および必要性の高いものから援助を決定している。2005年度の援助は18件、6,483,061円となった。

[その他]
@会員数は、45の個人および法人・団体 会員の増加があった。個人会員:436 法人・団体会員:1977 賛助会員:  70 総計:2483
A教会のバザーに出店し、献品されたものを売るとともに広報活動も行なった。
B一時帰国の宣教者の来訪もあり、宣教地の様子を聞くことも多く、宣教者と国内会員相互交流のため、クリスマスカードの発送、手紙の交換も従来どおり行なった。

II.2005年度会計報告
2005.4.1〜2006.3.31
収入
会費・寄付金13.741.428
基金取り崩し0
雑収入2.500
預け金利子3.472
前年度剰余金421.110
合計14.168.510

支出
援助金6.483.061
研修費92.802
運営経費3.906.620
次年度剰余金3.686.027
合計14.168.510

III.2006年度活動計画・予算の審議

[広報活動]
@『きずな』年4回発行 3800部
A講演会・勉強会
一時帰国中の宣教者を中心に講師を依頼

[援助活動]
これまでと同様の予算規模で、申請に応じて運営委員会で検討し、実施する。

[その他]
会のPRもかねて、教会のバザーなどへ出店させていただくなど、従来どおりの活動をする。(目黒教会 成城教会など)

IV.きずな95号について 2,3か所校正ミスがあったこと、今年は「海外宣教者国別統計」を2ページにわたって文字も大きく、ゆったりと掲載したことが担当者から報告された。

V.きずな96号について
@巻頭言は、金祝のためブラジルから帰国される佐々木治夫神父様(横浜教区司祭)に お願いすることになった。
A原稿締切りは8月10日、発行は9月1日、発送作業は9月6日(水)に行なう。

VI.援助申請の審議
今回申請が出されていた5件について検討した結果、次のように援助を決定した。
@ペルー(リマ)のSr,川俣恭子(礼拝会)からの、街角に立つ女性の更生職業訓練を している「マリア・ミカエラの家」に通う女性への援助として6000ドル(30人分のバス代、パン代の200日分、および緊急用の援助費)。
Aボリビア(サンタクルス)のSr.立石順子(宮崎カリタス修道女会)からの、カリタス学園(生徒1800名)のスポーツグランドの整備(安全確保のための金網フェンスを含む)費用5000ドル。
BブルキナファソのSr.黒田小夜子(マリアの宣教者フランシスコ会)から「アシジの聖フランシスコ栄養失調時センター」で使用する農業用小型トラククー購入費の積立金として80万円。
Cボリビア(サンタクルス)のSr.斉藤クニ子(礼拝会)から出されている、母子寮にいる17名の乳幼児のミルク代、小・中・高生33名の学費、教材、通学費として5000ドル。
Dカンボジア(シュムリアップ)のSr.黒岩あつ子(ショファイユの幼きイエズス修道会)から出されている、プレ・スクールの教材準備のためのコピー機の教入費、およびスタッフの交通手段としてバイク1台購入費として、合計3000ドル。

VII.その他
@6月に目黒教会のバザーに参加して、72.240円の利益を得たことが報告された。
A次回の委員会は、9月14日(木)、四谷のSJハウスで行なう予定。






『2005年度援助先一覧』

18件  6,483.061円

国名金額(円)内容
ボリビア490.333母子寮の乳幼児のミルク代、子供たちの学費、通学費、コンピューター1台分
ボリビア481.500カリタス学園公立高校情報処理科の機材、備品、パソコン5台分
ボリビア608.300障害者受け入れ活動の為の中古ライトバン購入費の一部、介護用品送料
ボリビア576.754日本人を司牧する為の旅費、ガソリン代、教会老朽化の新築費の一部
ボリビア289.982宣教司牧の為、14の村を巡回するガソリン代
ボリビア362.360訪問着動のための3人のシスター達の交通費
パラグアイ93.600小学校のFAX、パソコン付属品、教科書代金
マカオ150.000監獄に居る身内の居ない日本人1名を訪問する為の諸費用
ブラジル400.000盗難に会った為、代わりの自動車購入費の一部
コートジボアール208.329図書館から9つの小学校への移動図書館のガソリン代金
チャド175.840婦女子養成の為に働くアニメ一夕ーの給料一年分
インドネシア304.549両親に捨てられた障害児20名と貧困家庭の生活費、教育、通学費の一部
ブルキナファソ800.000栄養失調児回復センターの農業用小型トラック購入の為の積立金
シエラレオネ300.420発電機用のガスオイル購入費用1年分
ベル396.330まともな職業を勉強している貧しい女性30人分のパン代、バス代の一部
カンボジア332.220水上生活者の子供用通学の舟と舟のガソリン代、メンテナンス費、運転手給与
カンボジア222.672貧困家庭への支援、米、ミルク代金
日本289.872カレンダー、雑誌、カトリック新聞等購入、発送費用
合計6.483.061






『宣教者のお話を聞く会』




 7月20日(木)の夜、SJハウス会議室でアルゼンチンから一時帰国中の、北島泰治神父様のお話を聞く会をしました。夜ということもあり、今回は運営委員のための勉強会となりました。政治的、社会的なバックグランドは日本とは大いに異なるところで、日系の方々の司牧ということがいかに大変かを知りました。渡航時に、ミシオネスは寒くないといわれ、冬服をみな人にあげてしまったところ、お金もなく冬に大変寒い思いをしたことなど楽しそうに話される一方、苦労が重なり一時は胃かいようで入院し、10kgもやせたこともあったとか。意義のある勉強会となりました。紙面の都合上、ほんの一部を抜粋してお届けいたします。
  • 私が働いている所はアルゼンチン・ミシオネス州で、有名なイグアスの滝(ボリビア、パラグアイ、アルゼンチンにまたがっている)から50キロほど南。ちょうど日本の沖縄の反対側、気候もほぼ同じ。この州は6、7か国の移民を受け入れたので、人種のルツボである。全体的にはカトリックだが、すべての宗教があり、宗教活動が活発、召命の宝庫でもある。しかし貧しい人が多く、貧富の差が大きい。
  • 93年の暮れに到着。日本人司牧をはじめたが、司教代理から日本人の信者がいるのか、紙だけの信者だといわれた。ここで戸籍登録するためには洗礼証明書がいるので受洗したため。一世はカトリックではないが二世以降五世、六世はほとんどがカトリック。三世になると日本語ができない。いまお世話しているのは 一世と二世。最初私を助けてくれた人の大半は亡くなっているが、一世二世の方々を看取るのは自分の役目と思っている。
  • 1ドル3ペソと決められてから、輸出が好景気となって経済は徐々に好転、ガソリンも1リットル60円くらいで安定。ミシオネス州は木材(特に松)を輸出しているが、松に使う農薬が公害を起こしつつある。
  • 世界的に麻薬の汚染が広がっているが、一時深刻な状況もあり聖職者でも身の危険を感じることがあったが、市長が替わりいまは落ち着いている。
  • エスペランサの小教区の助任司祭になって3年半。インドネシア人の主任司祭とミサとロザリオの祈りを二本柱にして取り組んだ結果、1年余り過ぎて皆が変わり、今では模範的な小教区といわれるようになった。
  • 毎週7か所を車でまわっている。これまでと違って日系人をアルゼンチンの教会に合流させ、一緒になるための活動もしている。若い世代は現地の教会に根付いていくことと思うが、年輩の人々は日本のカトリックの信者がこの地にいることを、わかってもらいたいとの願いを持っている。