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KIZUNA 日本カトリック海外宣教者を支援する会 JAPAN CATHOLIC ASSICIATION FOR AID TO OVERSEAS MISSIONARIES






『アフリカ訪問の余韻!』

東京教区司祭 粕谷 甲一


 『カトリック教会のカテキズムJというローマで編纂したキリスト教教義説明の決定版を、日本の司教団が日本人向けに解説して出版しました。その第一部と第四部が食い違って見えるところがあります。
 第一部の「何を信ずるか」の信仰理解の中で、原罪の教えはキリスト教の本質部分に属しますが、その伝わり方についてこう書いてあります。
 「根本的に考えてみましょう。罪は伝わるというとわかりにくいですが、人は先天的に恩恵、つまり人の持っている神の命をたずさえて生れてくるのではない、と言えばわかりやすいでしょう。なぜならば、人は生きる中で、神との出会いをし、信仰によっていわば後天的に神の恩恵に浴するからです。ですからすべての人は恩恵のない状態から神によって救われるのです」。人間は生きていく途中できよめられるのです。
 第四部は祈りについてであり、人はなぜ祈るかといえば、「それは神から与えられたままに人は存在し、存在そのものの中には神の座があるからです。人間の存在には生れた瞬間から神が来ていらっしゃる」。この第一部と第四部の食い違いを矛盾なく結びつける道は一つしかない。人間の心の神秘という「場」の解明です。それは余韻とか磁場という表現に頼るしかありません。イエスの十字架上の死によって、全人類の罪はある意味で……余韻的に、磁場的に、そして……根本的に購われています。それは「切れていて切れていない」という中間状態であり、その中間状態をどう説明するか。聖書によれば、聖子は聖父に、「どうして私をを見捨てられたのか」と「切れた」断絶を叫ばれると同時に、「あなたの御手に私の霊を委ねます」と、「切れていない」永遠の一致を証しされています。
 マザー・テレサはすべての人間の心の中には「その人と神様だけの交わりの場」があり、それは切れないと言い、また、南ア連邦のデスモント大司教は、この神秘的な、切れていて切れていない人間の中心を「ウブンズ」と定義しています。このたび、シエラ・レオネで会ったシスターベアトリスも、アフリカ教育の原理は「ウブンズ」と呼ぶ「人間の本質」論であると言っていました。したがって宣教の目的は、洗礼の数を増やすということよりも、“神につながる人間の価値が尊ばれる社会づくり”という方向を目指すのではないでしょうか。
 日本では宮沢賢治が「世界全体が幸福にならない限り、個人の幸福はあり得ない」と言い、マザー・テレサは信者、未信者とは無関係にすべての人の中に神の光を見ています。また、徳永看護婦はアフリカのエイズ患者への献身によって『ナイチンゲール賞』をもらいましたが、その出発点をこう言っています。
 「自分が助産婦の資格をとってアフリカに着いた最初の晩に、呼ばれて出産に立ち会ったが、赤ちゃんは死んでしまった。その翌朝、人が呼びに来て、昨夕の両親が挨拶に来ているというので、リンチを受けて殺される覚悟をして出迎えたら、二人は深々と頑を下げ、「子供は死んだが、母親は助かった。あなたのお陰で」と心から赦してくれた、と。私は手を合わせて拝みたような感謝の気持ちで決心した。自分はアフリカの一人の子供の命の責任があるから、自分の命をアフリカ人の命のために捧げよう、と。
 彼女を動かしたのは、最初の晩に受けた赦しへの感謝でした。アフリカに行くミッションの宣教者は、アフリカ人に対して犯したキリスト教徒の罪の数々の赦しを請う願いをこめて働くのであり、新しいウブンズの哲学を謙虚に学ばなければいけないと思います。
 シエラ・レオネの修道院で頼まれて、現地のシスター達に「罪人の教会と罪ある教会」を巡って話をすることになり、奴隷貿易をめぐる悲しい歴史について話をしました。そのとき、若いシスターの一人が質問しました。「よくわかりました。私達の先祖は確かにたくさんの人が奴隷として連れてゆかれました。しかしヨハネ・パウロニ世が謝ってくれたから、私達はそのことを忘れました」と。私は胸がドキンとするような深い感銘とともに、そう簡単にすべてを忘れていいのかと思いました。アフリカ大陸の向こうにあるカリブ海では、あなた方の同属の人が自分達の歴史と母国語を勉強したいと願っても当局に禁止されています。しかしシエラ・レオネでは禁ぜられていません。そういう自由のある人が海の向こうの自由のない人のために何かしなくてよいのか。それはそう簡単ではありません。
 聖バキタは幼い頃、姉と共に奴隷商人に拉致され、次々と転売されているうちにイタリア人の手に渡り、洗礼の恵みを受け、さらに修道生活に召されて列福されるに至りました。その彼女が自分を拉致した奴隷商人を恨んでいないかということに対し、「心の底から感謝している」と答えました。なぜならそのルートなしに洗礼の恵みを受けることはできなかったからです。その感謝の心は尊いが、それから先が大切ではなかろうか。一緒に拉致された姉を含めて何千万のアフリカ人が奴隷として品物のごとく扱われ、その生涯を売られた先で閉じているからです。そのような余韻を心に深く秘めて、さらに祈りつつ新しい方向を探りたいと思います。

(注:粕谷神父は今年2月2日から12日までシエラレオネ・ルンサに滞在しました。)

ベトナムの山岳少数民族の子供と
ベトナムの山岳少数民族の子供と






『第20回運営委員会議事録』


日時:2006年3月9日(木)18:00〜19:30
場所:四谷SJハウス会議室
議事:
I.きずな94号について
 1)昨年11月末に行なった「現地のお話を聴く会」の3人のシスターのお話の要旨を掲 載、また、海外からのたくさんのお便り、さらに前号に載せられなかった記事を掲載したので、24ページとなったが、残念ながら各地からのお便りやメッセージは載せきれなかった、と担当者から報告があった。
 2)さすがに24ページの「きずな」は読みでがあると感じた、との感想があった。
II.きずな95号について
 1)巻頭言は先ごろシエラレオネを訪問された柏谷甲一神父にお願いすることになった。
 2)原稿締切りは5月10日、発行は6月1日、発送作業は6月7日(水)の予定。発送作業は今回だけ事務局の2階で行なうことになった。
III.援助審議
 1)ボリビアの沖縄第2移住地のSr.松下春江(宮崎カリタス修道女会)から、移住地および近隣のボリビア人の村を15か所回っているが、その移動手段としての車のガソリン代として、1年分2400ドルの申請があり、昨年に続きこの申請を承認した。
 2)ボリビアのSr小浜静子(サレジアン・シスターズ)から、サンタクルス、モンテッロ、サンフアンなどの移住地に住む日系人訪問活動のための交通費として、1年分3000ドル(3人のシスター×1000ドル)の申請があり、承認した。
IV.その他
 1)この度、会計の仕事が原のり子さんから会計監査の長井甫氏に移り、会計監査役を井上信一氏にお願いすることになった。
 2)海外宣教者の名簿2006年度版を700部作ることになった。日本からの派遣者に加え、ブラジルで日系人のために働いている60名が追加された。
 3)今年も都内の教会のバザーに出店し、物品の販売と広報を行なう予定(6月・目黒 教会10月・成城教会など)。
 4)次回の運営委員会6月15日(木)に四谷SJハウスで行う予定。






『神の国を目指して共に歩んでまいりましょう』

JLMM(日本カトリック信徒宣教者会)事務局長 漆原 比呂志

 いつも「きずな」を通して、海外で主と共に日々働いておられる宣教者の方々のお便りを拝読し、私どもJLMMのメンバーも大変励まされ、力づけられております。またこのたびの、JLMMカンボジアのトンレサップ湖水上教会における衛生・識字教育プログラム対しては、「日本カトリック海外宣教者を支援する会」の皆様から通学ボートのご支援をいただきました。お陰様で湖上生活者の子供たちは、学校に通うことができるようになりました。いつもJLMMの活動にも温かいお祈りとご理解をいただき、心から感謝いたしております。
 JLMMは毎年、全国の小教区の推薦を受けた信徒を面接選考し、東京・調布市にあるコングレガシオン・ド・ノートルダム修道院内のJLMM研修所において、7か月間の研修を行ないます。その修了者を「レイミッショナリー(信徒宣教者)」として海外へ派遣し、半年間現地語を学んだ後、いただいているタレント(賜物)、経験、技術などを活かし、2年間の活動に従事します。現地の人々と喜びも苦しみも分かち合い、「共に生きる」ことを大切にしています。
 JLMMは今年25周年を迎えます。日本カトリック司教協議会公認の信徒団体として、日本の教会からアジア・太平洋の開発途上国等16か国へ、これまでに73名を派遣してきました。現在はタイ、カンボジア、東ティモールの3か国に6名を派遣し、それぞれ差別される少数山岳民族の人々への支援、教育を受ける機会が少ない子どもたちへの識字教育、医療機関が十分に整っていない人々へのプライマリー・ヘルスケアを実施しています。
 JLMMのレイミッショナリーは、現地のカトリック教会やカトリック系団体、国際NGOに入り働いております。また、東ティモールやカンボジアでは修道会と協働し、小さくされている人々と共に生きるためのプログラムを実施しております。過去にも極東ロシアにおいて、修道会の海外宣教者と若いJLMM信徒宣教者が、お互いの持てるものを補完し、支え合ってきました。市場経済化で弱い立場に追われた病人や老人、孤児のための宣教活動を、極寒の地で展開してきました。
 「きずな」のアフリカからのお便りには、現地の修道院で欧州の青年ボランティアが活動している様子に触れていました。南西アジアのシスターは身体が二つあっても足りないほど多忙な活動の中で、体力の限界を感じ、日本人信徒のボランティアを望まれているとも伺っております。JLMMは4月の運営委員会において、日本人海外宣教者のこのような現状を知り、今後も修道会の方々と「神の国」を目指して共に歩んでいきたいと話し合いました。
 今年も4月から3名の女性信徒(元青年海外協力隊隊員カンボジア幼稚園教諭、ジンバブエ音楽教育、体育大卒の豪州・ワーキングホリデー体験者)が派遣前の研修に入りました。もし、海外宣教者の方々や新たな地でのミッションを検討されている修道会におかれて、JLMMとの協働の可能性がございましたら、お知らせください。JLMMは善意の寄付者と会員に支えられた小さな団体ですが、ミッションにおける一致の中でキリストの共同体がより開かれ深まっていく道を、主の教えに従い、海外宣教者の皆さまと共に歩ませていただきたいと願っております。

連絡先:
〒106−0032東京都港区六本木4−2−39
JLMM−日本カトリック信徒宣教者会
電話:03−5414−5222
ファクス:03−5414−0991
Email:jlmm@jade.dti.ne.jp