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KIZUNA 日本カトリック海外宣教者を支援する会 JAPAN CATHOLIC ASSICIATION FOR AID TO OVERSEAS MISSIONARIES







『Q家の話』

善きサマリア人修道会 景山 ひろ
“只今!”7年余の常夏のフィリピンから、寒い冬の続く日本に戻って来ました。
 長い間、「きずな」の皆様の励まし、支えて頂き、心から感謝申し上げます。
 フィリピン滞在中、最も心に残ったこと、難しく、すっきりしないこと、それだけに、よく描写していると思える体験をお話しします。
 それは、「レジオ・マリエ」(♯後記)の活動で、レジオ・マリエ会員のミセスJoと私が、忍耐強く、およそ2年間継続的に訪問したQ家のケースです。
 今にも潰れそうな一間だけの掘建て小屋に両親と三男、三女、計8人が住んでいます。
 父親は読み書きが出来ず、不定期に水菓子を売っていますが、(売上げの)現金は帰路の途中で飲み代に消えます。母親は、洗濯、アイロン掛け等の内職を紹介しても働きません。6人の子供達は汚れた破れた服か、裸同然の格好で、11歳の長女と8歳の次女は未就学です。
 親は子供を産むだけで、食べさせ、着せ、学ばせるという責任感はゼロです。本心は子供達に物乞いをさせ、生計源にすることです。
 母親が留守の時、私どもが水浴びをさせ、日本からの洋服を着せてさっぱりさせた時に、母親が怒った理由、また、将来を憂い、養護施設入りを勧めても「子供は親元で育てたい」と殊勝に断り続けたことも、漸く納得出来ました。
 子供達の未就学は金銭よりも、もっと深い、法的な原因からでした。両親の結婚証明書も、子供達の出生証明書も皆無です。ミセスJoが数ヵ月間の仮入学許可を得て、長女と次女は、共に1年生に入学しました。その間に私共二人は、法的原因をクリアすることに奔走しました。
 両親を市長が行う集団結婚式に参加させ、3ヵ月後にやっと、民法上の結婚証明書を取得しました。
 これをもとに、気の進まない両親を叱咤激励しながら、出生証明書の申請、発給のため、保健所、市役所、弁護士会等々にお百度を踏みました。数ヵ月と思った仕事は1年以上かかり、ミセスJoとホッとしたのも束の間…母親は賭け事に走り、長女も退学、賭け遊びに加わり、次女以下の幼子達は物乞いとゴミ箱あさりで空腹を充たしているのです。
 この有り様に全身が萎え、マリア様からの、レジオ・マリエの任務とは言え、失意のどん底に落とされました。
 長い歴史の中で複雑に鍵れた社会構造の糸を解こうとする時、驚愕、焦り、不安、疑問で、いっぱいになります。
 そのような時、「きずな」は大きな励ましでした。他の宣教者の同じ、または、もっと、切羽詰まったケースに触れ、力が戻って来ます。数行でも丁寧に記された「ザ・メッセージ」や「Echo」からの、熱い祈りと思いやりに希望が蘇ります。
 現地の、見捨てられ、気力を失った無数の人々に繋がる希望となって……。

 Salamat Gid!
 本当にありがとう!!

(♯「レジオ・マリエ)
「マリアの軍団」の意味。カトリック教会内の信徒使途職組織の一つ。1921年、アイルランド・ダブリンで創設された。この団体の目的は、祈りと活動を通して、孤独な老人や病人を訪問したり、話し相手、共に祈るなど愛の業を実践することである。)






『第3回運営委員会報告』

 「会」の第3回運営委員会が2001年12月11日(火)午後6時から東京・四谷のSJハウス会議室で開かれ、次の案件を審議、決定した。
議事
(1)「会」の顧問司教に島本 要大司教(長崎大司教区)をお願いした経緯等について報告があった。
(2)「きずな」77号について
 ★原稿が少なかったので、写真やカットを多用したとの担当者からの報告があった。
 ★写真等は多い方が、視覚に訴えて良い効果がある等の意見があった。
(3)「きずな」78号について
 ★巻頭言は帰国したシスターまたは女性信徒に依頼する。
 ★原稿締切りは2月10日。発行は3月1日、3月6日に発送作業。
(4)援助審議(別項)
(5)その他
 ★「会」の案内パンフレットが11月20日に納品され、77号と共に会員に発送された。
 ★八幡さん(事務局)の緊急の休みの場合、ローシャイタ神父または樋口さんに連絡することや、日常のゴミの処理などについても申し合わせた。
 ★次回運営委員会は3月12日(火)18時より、東京・四谷・SJハウス会議室で開催する予定。






『援助の決定』

 (2001年12月11日現在)
1.イスラエル・エルサレムのSr阿久津玲子(マリアの宣教者フランシスコ修道会)より
 ヘブライ語を話すカトリック共同体の活動に必要な「子供用公教要理」「教会用歌集」「祈りの本」等の編纂費8,500ドル(1,135,600円)
2.インドネシア・Sr服部麗子(御聖体の宣教クララ修道会)より
病院用ベッド、病人用リフト、大型洗濯機などの購入についての援助要請。10,000ドル(1,341,500円)の援助を決め。細目については、日本へ帰国する予定のSr服部と再検討 する。
3.マダガスカル・Sr平間理子(マリアの宣教者フランシスコ修道会)より
 カトリック看護学校生35名の奨学金50万円。
4.パキスタン・聖ラファエル病院のSr岡野真弓より
 訪問診療に必要な薬品代、検査用備品、栄養補助食品等の購入費として1,000,000円
5.南アフリカ・ポクスバーグ・根元昭雄神父(フランシスコ会)より
国から援助を打ち切られた子供達の学費援助の一部として、1,000,000円の援助申請
上記いずれも援助決定。
援助総額:4,977,100円