『ココ(おばあちゃん)の願い』マリアの宣教者フランシスコ修道会 中村寛子
隣国ルアンダの部族間斗争は、ザイールにとっても内に孕んだ問題で、いつ爆発するか分らない無気味な存在である。現に、南部のシャバ州では、カタンガ族が隣の州のカサイ族を排撃しており、国内に数万人の難民が居る。この数年間のすさまじい政治、経済の崩壊の中で、民族同士の分裂問題が、さらに人々を不安に陥れている。
私は三年前から、対外的な使徒職を離れて、私達の会の初期養成の仕事に携わっている。全国から神の招きを感じて集まって来ている十五人の志願者(プレノビス)達は、私、日本人を通して、初めて異文化と出会うわけだが、彼女達同士も同じザイールと言いながら、言語の違う他の部族と出会い、初めて共に生きる体験が始まる。フランス語とザイールの中で一番普及しているリンガラ語が、共通語として私達の共同体では話されているが、そのリンガラ語を知らなかった人も居るし、各々の地方の主食、料理の仕方、習慣、反応の仕方も、いろいろと違う。…彼女達にその出身地を尋ねると、両親でさえ生活したことのない部族の発生地、つまり、ルーツを答える。 最近、政治情勢の混乱の中で、メンタリティ、習慣、価値観も変わってしまい、アフリカ社会の特長だった家族的な繋がりも、エゴイスティックな相手利用に変わった社会の影響を、モロに受けている若い人達を前にして、他の三人の、ザイール人シスター達は、「今の若い人の気持は分からない」と嘆息する。しかし、部族への帰属意識は、相変わらず非常に強いものと目に写る。 「最近、ココになって(年をとって)、物忘れがひどくなりました」と言ったことから、ココと呼ばれるようになり、それ以来、ココとしての私の立場も定着した。 一般的にアフリカの社会では、教育上、ココの役割は非常に大きい、両親は、子供達を叱り過ぎると嫌われないかと…口を喫んでしまうが、ココにとっては、若い人たちへの人気取りよりも、死後、先祖にどのように迎えられるかの方が大切である。ココは、先祖から伝えられて来ている部族の価値、精神、真理を、手加減しないで、はっきりと子供達に伝えてゆく。そうしないと、先祖から、その義務を怠ったことをとがめられ、その仲間うちに迎え入れてもらえない。私の”ココの役目はこれです”と厳しい表情で宣言したら、志願者たちは恐る恐る「でも、ココはやっぱり甘やかしてもくれる」と言いに来た。 私達にとって先祖とは、聖フランシスコであり、創立者である。 新しいフランシスコの家族に呼ばれた人々が、部族を越えて互いに…許し合い、受け入れ合い、尊敬し合い、友のために命を捨てるまでの平和の使者にならなければならないことを、カサイ族、ツチ族もいる志願者達がわかってくれることが…日本からのココの願いだ。 『援助決定('94.6.8決定分)』
『第49回役員会報告』「海外宣教者を支援する会」の第49回役員会が、94年6月8日(水)午後6時から、東京・江東区潮見の日本カトリック会館会議室で開かれ、次の案件を審議、決定した。@一九九三年度事業報告 ●役員会を4回(6月18日、9月22日、12月14日、94年3月8日)開催、”きずな”内容や、援助要請について審議、決定した。●93年度援助総額は、約八、八三六、〇五九円。●広報活動=広報誌”きずな“を、四回発行(6月、9月、12月、94年3月)●援助活動=世界各地の宣教者より要請で、必要に応じた援助を審議、決定●文通によるコミュニケーション=海外で働く宣教者と国内会員が、クリスマスカード、手紙または雑誌の送付など行って交流をはかった。●援助物資の発送=女性グループ、ベトナム青年たちの協力で、衣料等の発送を行ない、現地のシスター達に喜ばれている。●その他、各教会のバザー等に参加して「会」の活動をPRした等。 A一九九三年度決算報告(別項) B“きずな“48号について、 ●巻頭言は、現在帰国中のシスターのいずれかに寄稿を依頼する。人選は、シスターたちのスケジュールを調整して決定。 9月1日発行。原稿〆切=8月10日。発送は9月7日(水) C援助審議=(別稿) Dその他=●前号に添付したアンケートは、回答別に分類して、48号から掲載する●移住協議会事務局メンバーのシスター守山(無原罪の聖母会)へ役員加入を委嘱する●国際協力委員会の濱尾委員長(横浜司教。「会」名誉会長)に、に、最低年一回、役員会への出席を要請する。 以上の案件を審議、承認、決定した。 『1993年度会計決算報告』1993年3月31日現在 単位:円
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