トップ会報『きずな』13号目次 > 本文
KIZUNA 日本カトリック海外宣教者を支援する会 JAPAN CATHOLIC ASSICIATION FOR AID TO OVERSEAS MISSIONARIES






『日本企業も進出しない国』

東京大司教 白柳誠一



 世界中、何処に行っても日本人に会わない国はないと言われるほど、日本人の海外進出にはめざましいものがあります。研究者、商社員、旅行者など、その数は驚くべきものです。ところが、この夏、私は、中米ハイチで大変珍しいことに遭遇しました。
 「今日はハイチ在住のすべての日本人をお招きしました」と言って私を歓迎してくれた日本大使館で出会ったのは、大使ご夫妻と、日本人修道女たちだけでした。この国にさじを投げてしまったのでしょうか〜。生命力あふれる日本商社の人は、ひとりも居ませんでした。
 ハイチは世界長貧国の一つであり、国民総生産額一五億一千万ドル、一人当り三百ドル、文盲率八五%以上。地下資源もない小国、ハイチは、全くホープレスのようにみえました。
 歴史的に見れば、スペインやフランスの植民地であったハイチは、ラテンアメリカの他の諸国と同じようにカトリック国と言われています。しかし、実際には、聖職者の不足と文盲とが入りまじって、宗教々育は行き渡らず、宣教地なみと言われ、各国から宣教者が送られています。また、極端な独裁国家でもあり、それから生ずる多くの弊害に国民は悩まされています。従って、社会の福音化への努力が強く求められていますが、お国柄、これも大変難しいようです。
 私の滞在中に大統領選挙があり、正しい選挙を人々に訴えた、三人の宣教師が、国外追放処分を受けましたが、これをみても前途多難が予想されます。
 日本からはクリスト・ロア会の修道女が四人と、レデンプトリスチン修道女二人が、宣教者として滞在しています。クリスト・ロア会の修道女は、医薬品に事欠きながらも貧しい人々への医療活動を根気よく続けています。レデンプトリスチン修道女は観想会員として、修道院の中で、ひたすら、祈りと観想の生活をしています。
この両者の組み合わせには、大変大きな感銘を受けました。
 観想会修道女が、宣教者として存在することは、ちょっと不思議に思う人があるかもしれませんが、これは、福音宣教が大きく叫ばれている今日、私達に対して大きな警鐘を打ち鳴らしているのでしょう。
 福音宣教、福音化のためには生活の証しと活動は確かに必要ですが、神の、助けを求める切なる祈りも必要です。これは、人の心を動かし、神のみことばに心を開かせてくれるのは、神の恵みであり、聖なる霊の働きによるものであり、宣教とは、神のめぐみへの協力にほかならないからです。






『第十四回役員会報告』

 「会」は、去る十月二十二日伏午後六時半から、中央協議会々議室で役員会を開き、次の案件について審議・決定した。
  • 「きずな」について @「きずな」十二号(十月一口発行)についての反省と検討。
    同十三号は十二日こ日用発行予定。巻頭言は、白柳大司教様に依頼する。・白柳大司教様に同行、南米を訪問したローシャイタ神父の帰国報告をのせる・国内会員の便りを充実させるため、事務局から依頼状を出して呼びかける。(以上了承)
    A横浜教区からの会員名簿貸出し依頼について横浜教区で、海外で働く宣教者援助のためのアンケート実施に当り、支援する会の会員名簿の貸出し依頼があった。これに対して、次のような点を決めた。・匿名希望を削除した名簿をプリントし、他に利用しないこと、個人の意志を尊重することを前提として貸出の期限付とし、使用後返却してもらう・アンケート結果については、参考として資料をもらう。
    B国際協力委全国担当者会議関連事項の報告
    ・「きずな」の内容は、教区小教区に限って、自動的に転載してよいことを決定。その湯合は「会」の了解を得ることにする。
    ・海外宣教者の出身地を調査し、出身教区、小教区に、その海外で働く宣教者の支援を願う。
    以上、担当者会議の決議事項の報告があり、これを了承した。
    C援助要請(別稿)を承認
    D「アフリカの声(仮題)」発行変更の件クリスマスごろに発行する予定だった「アフリカの声」は都合により、発行を、昭和六一年ご復活祭ごろに変更することになった。
    また、その発行の仕様も、次のように変更する。
    ・出版社による発行をやめ、日本カトリック移住協議会と海外宣教者を支援する会とで、単行本として自費出版とする・責任は法人である日本カトリック移住協議会の責任発行とする・金額は未定・部数約四千部・受注・発送は事務局が行なう。






『第四回福音宣教研修会』

 去る十月二日・三日の両日、横浜「聖母の園」で、海外宣教を考える会(代表Sr高橋興子)と国際協力委員会の共催で、第四回福音巨驪ウ研修会が開かれた。
 この席で、信徒宣教者の徳永端子さんは「はてしないアフリカ・その現状」というテーマで、ザイールに七年、また、二十四時間チャリティ「愛は地球を救う」で、日本テレビからエチオピアに派遣された体験を話された。お話しの中で「宣教とは、何かをやってあげることより、喜び、痛み、悲しみを共に分け合って生きて行くことではないか」「飢餓で死にそうになっている人が、それでも、目の前にある食べ物をくれるまで、取ろうとはしない。人間性の高潔さに、頭が下った」という言葉が印象的だった。
また、マリアの御心の子女会のシスターで、アフリカ・プルキナ・ファソで修練長をしている野間順子さんは「祈ってくれているということがいつも力になる」と述べ、祈りによる一致を要望された。
 パリ宣教会のワレ・ジャン神父は「福音宣教、昔と今―日本の福音宣教の歴史から学ぶもの」というテーマのもと、昭和十年代に、日本にいた宣教者がみた、当時の日本の姿を紹介しながら、今日の日本の宣教について述べられ、参加者も熱心に耳を傾けていた。
 このあと、アフリカのスライド、宣教についての分科会、最後に浜尾司教様のミサが捧げられ、研修会は終了した。(中谷功神父)('85.10.22)





『ブラジルへ新印刷機を!!』

 「会」は在ブラジルの五十万人の日系人カトリック信者の司牧と宣教に欠かすことの出来ない印刷棟購入のため、日伯司牧協会(PANIB)の要請によって、たゞいま「会」の会費とは別に、個人または、法人の篤志による「『PAN!B』印刷機購入用」の特別募金を募っています。
  • 募金総額四、七六八、〇〇〇円
  • 募金額一口五、〇〇〇円(何口でも結構です。一口数に満たなくとも、貴重なご援助として頂きます)
  • 幕金の期限一九八六年(昭和六十一年)一月までとします。
  • 幕金方法同封の振替用紙をご利用下さい。(会費とともに、ご送付下さる方は、記事偶にその旨明記して下さい)
  • 募金応募宛先〒102東京都千代田区六番町10〜1・カトリック中央協議会内日本カトリック移住協議会・「海外宣教者を支援する会」

支援、
援助先援助項目援助金額摘要
シエラ・レオネ奨学金2年分250,000※1カ月10,000円1年分120,000円
ザイール児童教育1,000,000*児童教育栄養失調児救済身障者援助ETC
ザイール福祉救済(絵葉書売上より)*児童教育栄養失調児救済身障者援助ETC
ブルキナ・ファソ(オートポルタ)奨学金(生徒4名6年分)912000(絵葉書売上より)14才〜19才4人1人1年分38,000円
チャド薬品、ノート、鉛筆、送料100,000
計2,252,000円





『最近のブラジル事情』

日本カトリック移住協議会理事 ローシャイタ神父(談)
 去る七月十五日、ブラジルのアバレシーダで開かれた聖体大会に出席された白柳大司教様に同行して、五年ぶりにブラジルに帰って来ました。聖体大会のあと、翌十六日に、大司教はブラジルの司教団九十人を前に、日本の教会事情について話されました。その中で大司教様は「昨年暮、訪日されたブラジル司教協議会々長のイヴォ・ローシャイタ司教によって、ブラジルの教会事情を理解し、ブラジルとの交流が一層深まった」「現在、日本から二六〇人以上の宣教者が、海外に派遣されているが、ブラジルで働いている宣教者たちをブラジルの教会が快く、受入れてくれていることに感謝する」「F・ザベリオ以後、迫害、かくれキリシタン時代を経て、日本の教会はいま自由で、物質的には発展したが、精神的には、まだ問題がある」と述べ、日本の教会の現状を説明された……。
 五年ぶりにブラジルに帰って、まず感じたことは、ブラジルは、以前の軍政から民政になって、国情も非常に良くなり、国全体が、リラック・スしているということでした。
 しかし、インフレは相変らずで、経済・社会的にも大きな格差があります。とくに大きな問題となっているのは、土地問題で、大企業の進出、買収などによって、土地を失った人も多く、失業者も増えていることで、今後、政府が、土地問題、農地改革をどうするかが、成否のカギとなるでしょう。
 さきにもお話ししたように、軍政から民政に移って、国情もよくなりましたが、とくに今年三月に就任したサルネイ大統領になってから、政府とカトリック教会の関係もよくなり、政府と教会との協力関係が生れました。サルネイ大統領は就任後、ブラジル司教団会長、副会長ら教会の最高幹部とも何回も会い、教会の政府への協力を要請しました。農地改革、社会的改善策、新憲法の草案づくりなどが当面の施策で、教会も、出来るだけ協力することになっています。軍政時代は、デモや政府批判などすると、すぐ警察力が行使されていましたが、最近では、失業や、土地を失った人のデモに対しても、警官は、たゞ交通整理するだけです。二十一年間、こんなことはありませんでした。圧諷下では、教会は「国民の声」を代表していたのですが、いまは、もはや、その必要はなく、国民が自分で声を出すようになったのです。ミサや典礼も分りやすくなりました。ミサの前に、信者がその日のミサについて説明しミサ中にも典礼の意義について説明し、聖歌などもアルゼンチンで作られた歌が歌われるなど、皆が生きた典礼″に参加しているという印象です。
 日本からのミッションについてお話ししましょう。
 信者も神父も、修道女たちも、皆、慌しく走り回っていますが、皆、疲れた様子もなく、喜びに生き生きしているという感じでした。
 国が広いから、コセコセしないですむということではなく、ミッションの方々は、「自分は一人ではない」「自分は日本の教会から派遣されているのだ」という、日本の教会とつながっているのだ、という意識が強く、それが、喜んで、日本人(日系人)のために働く原動力になっているのだと思います。
 日本人のためだけでなく、宣教者たちは、ブラジルの人たちのためにも喜んで働いています。それが、ブラジルの人たちにも受け入れられているのです。
 いま「解放の神学」が云われていますが、聖職者たちが、貧しい人、弱い人たちの立場に立って、国民とともに働くという新しい傾向がブラジルには出て来ています。ある日系人の神父は、神学生時代から、休みの日には、労働者や農民の中に入りこみ、彼らが何をするか、何を望んでいるのかを自ら体験したという例もあります。
 ブラジルに日本人の信者が多い(約五十万人)のは何故かということをよく聞きますが、これは、ブラジル移住の時に、ブラジルはカトリック信者が多いから、信者になった方がよいなどと云われ、いとも簡単に洗礼を受け、また授けたことが多かったということも云えるでしょう。ですから、公教要理を知らない人も多かったのですが、今日ではそういうこともなく、受洗も厳しくなっています。
 しかし、こういう例もあります。最近、日本からも、生長の家、PL教団、メシア教など多くの宗教がブラジルに入っていますが、カトリック信者でありながら、そちらの宗教にも入るという人が増えています。いわば「かけもち宗教」です。しかしこれは決して、反カトリックというわけではないのです。これらの宗教は、よく相手の相談にのり、時には経済的な援助もするので、そちらにも蕨を出すわけです。彼らにとっては決して矛盾することではないのです。
 これらの宗教は「カトリックでも構わないので、どうぞ」という姿勢なのですね。
 これからのブラジルの重大な課題は、やはり、経済的格差の解消でしょう。教会では、さらに多くの宣教者が求められています。
 宣教の仕事はいくらでもあります。神父、修道女、信徒、「どなたかいらっしゃいませんか?」ブラジルの人たちは、さまざまな問題を抱えているのに、大変、明るく、楽天的です。
 デイオスエブラジレイロブラジルで古く云われている言葉に「Deos e Brasilerio」(神はブラジル人)があります。神を同胞とみる信仰と確信があるので、どんな問題にも失望せず、解決すると信じているのです。
そして、それは、あすのブラジルを生み出すための一人一人の、確信であるとも言えましょう。(談・文責・編集部)


日伯司牧協会で、くつろがれる白柳大司教様
日伯司牧協会で、くつろがれる白柳大司教様